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わかりやすいディベートのしくみ 「⑤主張の文章構成」 

2022年1月16日学校情報

この記事を書いた人✐横山悠規 

この記事はシリーズものです。過去の記事は下記リンクから。

「①ディベートの分類」
「②ディベートで成長するための心構え」
「③定義の重要性」
「④ふさわしくない定義」

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シリーズの目的

・「英語ディベートが苦手…」
・「英語での発言に自信がない…」
・「大会に向けて練習したい…」

そんな皆さんの悩みを解決するために、このコラムを書き始めました。

このコラムでは、ディベートにおける各スピーカーの役割や、各スピーチに含むべき内容とアドバイスについてお伝えしていきます

第5回は「主張の文章構成」についてお届けします。

主張が求められる場面

主張とは、相手を説得するために自分の考えを伝えることです。主張が求められる場面は、ディベートに限らず、エッセイを書く時、スピーキングテストを受ける時など様々にあります。「あなたはどう思いますか?」という問いかけに対し、評価や採点のプレッシャーの中で説明しなければならないため、回答につまってしまった経験をした方も多いのではないでしょうか。では、どのようにしたら効果的に主張を述べることができるでしょうか。

PREPとは

主張の文章構成としておすすめなのがPREP(プレップ)です。それぞれ、Point(主張)、Reason(根拠)、Example(具体例)、Point(主張)の頭文字を取ったもので、意見陳述の基本的な文章構成としてよく使われます。Homework should be abolished (宿題を廃止するべきだ)という論題を例に、PREPの詳細を見ていきましょう。ショートコードショートコードショートコードショートコード

主張を伝えただけでは「なぜそう言い切れるの?」という疑問が残ります。主張は理由と具体例をセットで述べる、ということを意識しましょう。ちなみに、"Preparation(準備)" とPREPが似ていることから、「主張を述べる際に準備(PREP)するべきことは何か」と覚えると忘れないですよ!

効果的な主張とは?

そもそも効果的なPoint(主張)とは何なのでしょうか。実際授業を行っていると、理由や具体例として述べた方が良いアイデアを、主張として使っているケースをよく見ます。

よく聞く主張として「宿題は単なる繰り返しの作業だ」という文があります。これは効果的な主張と言えるのでしょうか。

この主張をPREPに当てはめると、以下のようになります。

Point…「宿題は単なる繰り返しの作業だ」

Reason…「繰り返しの作業でできるような課題でないと採点・評価の際に教師の負担が大きくなるからだ」

Example…「例えば、簡単に採点・評価ができる複数選択式の問題、単語の書き取り、ドリル問題等がよく宿題として課される」

Point…「宿題は単なる繰り返し作業だと言える」

これは事実を述べているに過ぎません。「具体例を伴った根拠で判断を裏付けられた事実」である、と言えます。 聞き手からすると「宿題が繰り返しの作業であることは分かったが、それがなぜ宿題の廃止につながるのか」と思ってしまいます。

では、主張のポイントを「宿題は意味がない」とし、「宿題は単なる繰り返しの作業だ」を根拠として述べるとどうなるでしょうか。

Point…「宿題は意味がない」

Reason…「宿題は単なる繰り返しの作業だからだ」

Example…「例えば、英単語を繰り返し書き取る単語のドリル練習などは、いくら数をこなしても手が痛くなるだけで、それらに取り組んだからと言ってテストの結果が良くなったとは思わない」

Point…「宿題はやる意味がないと思う」

これは、個人の感想を述べているに過ぎません。「具体例を伴った根拠で結論を裏付けられた感想」である、と言えます。いち個人の主張としては意味がありますが、聞き手からすると、「それによって全員に対して宿題を廃止にする」と言われたら疑問符が頭に浮かぶでしょう。ディベートで主張として述べる場合は、客観的な解釈があった方が良い、と言えます。

では、主張のポイントを「宿題は生徒たちの学力の向上に貢献していない」とし、「宿題は単なる繰り返しの作業だ」を根拠として述べてみましょう。

Point…「宿題は生徒たちの学力の向上に貢献していない」

Reason…「宿題は単なる繰り返しの作業だからだ」

Example…「例えば、宿題では単語をたくさん書き取るドリル練習など、時間と労力はかかるが、あまり深く考えながら取り組む必要がない課題を課されることが多い。それらの繰り返し作業は学力の向上には直接つながらない。」

Point…「宿題は生徒たちの学力の向上に直接的には貢献していないと言える」

こうすると、PREPで述べた内容は「具体例を伴った根拠で解釈を裏付けられた主張」になります。この内容であれば、「宿題を廃止するべきだ」というテーマのディベートで肯定側が述べていても効果的であると言えます。

主張では、単に事実や感想を伝えるのではなく、その事実や体験からどのような解釈ができるのか、 というところが大切になります。つまり、効果的な主張とは「事実から導かれる自分なりの客観的な解釈を加えた文」と言えます。先の例で言うと「宿題が繰り返しの作業だからどうなのか」という解釈の部分をしっかりと深めることが重要です。同じ"repetitive task" というフレーズを使って、自分なりの解釈を加えていない例(X)、自分なりの解釈を加えている例(〇)を以下に示します。

× Homework is a repetitive task.(宿題は繰り返しの作業だ)
〇 Just doing repetitive tasks does not lead to improved academic performance.(繰り返しの作業を続けるだけでは、学力は向上しない)
〇 Repetitive tasks harm students’ autonomy.(繰り返しの作業は、生徒の自主性に悪影響である)

上記の(X)の例ではHomeworkとrepetitive task の関係性が示されているのみですが、(〇)の例ではrepetitive task (原因)とそれ以外の事象、improved academic performance, students’ autonomy (結果)との因果関係が浮き彫りにされている、と言えます。主張と根拠、具体例を述べる、というPREPの構成上、より具体的に因果関係を示せる内容がより効果的なのです。

また、他によく耳にする主張の例として、「宿題が生徒の負担になっている」というものもあります。この主張も一見すると解釈を加えた文に見えますが、事実を述べているに過ぎません。ディベートにおける主張として述べるのであれば、その負担が生徒にどのような影響を与えているのか、という情報も含めた文にすると、自分なりの客観的な解釈を含んだ主張にすることができます。

× Homework is a burden for the students. (宿題は生徒たちにとって負担である)
〇 Having too much burden as homework leads to sleep deprivation. (宿題の負担が大きすぎると睡眠不足につながる)
〇 Having an unnecessary burden negatively affects motivation for study.(必要のない負担は勉強のやる気に悪影響を与えている)

理由と具体例はいくつ用意すべき?

理由・具体例の使い方も、様々にあります。大きく分けると、①1つの理由と複数の具体例で裏付ける方法、②複数の理由で裏付ける方法があります。どちらもメリット・デメリットがあるので、使い分けができるようにしておきましょう。

①1つの理由と複数の具体例で裏付ける方法

まずは、1つの主張に対して、1つの理由と複数の具体例で裏付ける方法です。

主張「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」

Homework does not directly contribute to improving the students’ academic performance.


理由「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しないから」

It is because doing meaningless repetitive tasks does not lead to improved academic skills.


具体例①「無意味な繰り返し作業の例」
(車を作ろうとしているのに同じ部品だけをひたすら作り続ける)

Imagine a situation where you are working at a car factory by yourself, and you are tasked with making the same engine part over and over again. You might be able to become a master of making that specific part, but you will never be able to build a car only with one kind of engine part. In order to improve the academic skills, you will need to learn how to make other necessary parts, how to put those parts together, and how to make different sets of parts function as a whole.


具体例②「典型的な宿題で繰り返し作業と呼べるものの例」
(英単語を何度も書いて練習する)

A typical example of homework as repetitive work is writing English words ten to twenty times over in a notebook. You might be able to memorize the spelling of the words better, but you cannot learn how to use those words in a sentence. You might get a sense of accomplishment by filling the pages of the notebook with the words, but even if you wrote the word down a thousand times, you effectively only learned one single word as a result.


具体例③「学力向上につながらない取り組みの例」
(宿題を提出すること自体が目的となり、宿題への取り組みが意味のない繰り返し作業になる)

Another very common example is doing the homework with the sole purpose of turning it in by the deadline. If the sole purpose of doing homework is to turn it in on time, you are likely to just copy the answer from the answer sheet or mindlessly fill in the answer sections because it is much faster and easier that way. Soon, doing homework becomes repetitive work that does not involve any meaningful process of thinking.

  • メリット:深く説明ができ、聞き手がイメージしやすくなる
  • デメリット:理由が1つなので、反論されやすい

②複数の理由で裏付ける方法

次に、1つの主張に対して複数の理由で裏付ける方法です。

主張「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」

Homework does not directly contribute to improving the students’ academic performance.


理由①「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しないから」

It is because doing meaningless repetitive tasks does not lead to improved academic skills.


具体例①「無意味な繰り返し作業の例」
( 車を作ろうとしているのに同じ部品だけをひたすら作り続ける )

Let’s say you work at a car factory by yourself, and your responsibility is to keep making the same engine part. You might be able to become a master of making that specific part, but you will never be able to build a car only with one kind of engine part. In order to improve the academic skills, you will need to learn how to put those parts together and understand how to make different sets of parts function as a whole. Learning those processes requires you to think, but repetitively making the same parts does not require any process of thinking.


理由②「他の人とのコミュニケーションを介さずに得た情報は記憶に残りづらい」

Also, another reason is that it is much less effective to learn something without communicating with other people.


具体例②「記憶に残る情報の例」
(休日に遊びに出かけた先で友達に聞いた情報)

For example, it is difficult to forget the information that you learned from your friend while you hang out with them on your day off. In this case, hanging out with your friends is a special event that involves active and focused communication. In contrast, doing homework is a dull, repetitive task that cannot be called a special event, and there is no communication involved whatsoever. Therefore, we tend to quickly forget what we learned through homework.

  • メリット:理由が複数ある分、相手から崩されにくい
    (1つの理由が反論で否定されてしまっても、残りの理由が残る)
  • デメリット:1つひとつの説明が薄くなる

一つの主張に対して理由と具体例をいくつ述べるべきか、については、試験等によっては 「あなたの意見について理由を2つ述べよ」というように明確に指定されている場合もあります。ディベートにおいては、その主張が立論においてどれだけ重要なものなのか、その後の論の展開で説明すべき内容がどれだけあるのか、スピーチ全体のうちでその主張の説明にどれだけ時間を使えるのか、などを鑑みて総合的に判断していきましょう。


前述の例では一つの主張に対して二つの根拠を組み合わせる、という形で例を述べましたが、必ずこうしなければいけない、というわけではありません。一つの主張に対して一つの根拠を述べ、具体例をたくさん述べる、という形もあります

例えば、 ❶「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」 という主張の根拠として ① 「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しないから」 と述べ、具体例として、A.無意味な繰り返し作業の例 B.典型的な宿題で繰り返し作業と呼べるものの例 C.能力向上につながらない取り組みの例…などのように具体例を列挙する、というのも一つの手です。

ただし、一つ言えることとしては、一つの根拠のみで主張を裏付けた場合、その根拠を否定されてしまうと、その主張は成り立たなくなってしまう、ということです。根拠を二つ述べていれば、一つの根拠が否定されてしまっても、まだ主張自体は崩されていない、と言えます。多くのディベートにおいて論題に対して肯定する理由、否定する理由をそれぞれ二つずつ求められることからしても、一つの主張には二つ以上の根拠の裏付けがあるとディベートにおいて有利である、と言えます。

PREPで使えるフレーズ

最後に、PREPの構成に使えるフレーズをご紹介します。ショートコード

※firmly 「断固として」、strongly 「強く」、with certainty 「確信とともに」などを加えて強調することもできます。(例:I strongly believe that homework is resulting in physical harms on the students.)ショートコード

※主張の文に従属文としてつなげて伝えることもできます。(例:I believe that assigning homework has resulted in physical harm on some of the students because it requires them to sacrifice an enormous amount of time to complete.)ショートコード

※Remember…を使って、聞き手に具体例を思い出させる、という手法もあります。(例:Remember the news on the student who committed indiscriminate murder because of the stress from the overwhelming amount of school work?)ショートコード

今回は「主張の文章構成」をテーマにお送りしました。PREPの文章構成は、即興で意見を述べる際にも役立ちます。ぜひ覚えましょう!

次回のテーマは「立論の組み立て方」についてです。お楽しみに!

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