【小学生】習い事を嫌がる子供の対処法は?習い事をする意味と親の向き合い方を解説!
先日の保護者面談で、小学生のお子様を持つ保護者の方から、こんなご相談を受けました。
“小さいうちにいろいろな経験をさせてみるのがよい”と聞いて、こどもがやりたいという習い事をさせてみたんです。
楽しそうには通っているんですが、とても疲れた様子で、家に帰るとすぐに寝てしまうんです。忘れ物も増えたし、学校の宿題も雑にやっていると学校の先生から言われました。
全然落ち着きがないのが気になるので、習っているスイミングをやめて、集中力を養える書道をさせようか迷っています。
友達がいるからやりたいと本人も言ってますし・・・。
習い事とうまく付き合えていますか?
小さいころの経験はとても大切です。とくに小学生の6年間において、見たものや聞いたことはとてもお子様の印象に深く残ります。習い事は感受性を養うことにも繋がりますから、やりたいことはさせてあげるのがいちばんです。
ただ、お子様がやりたいという習い事すべてをどんどんさせてあげることは、必ずしも効果的ではありません。今回のご相談のケースのように、お子様ご自身の興味関心によってお選びになった習い事が、かえってよくない影響につながってしまい、その状況からなかなか抜け出せなくなることもあります。
学校生活を楽しめるように自己管理し、努力すること、それが小学生のお子様にとっての何よりも大切な“仕事”です。
勉強はもちろん、自分の得意なことやそうでないことは何かを知り、自分の強みを自覚し、先生や友達からいい刺激を受けて大きく成長できる時期なのです。その成長の過程で習い事をうまく活用することが大切です。
ストレスサイン?子供のこんな言葉に要注意!
今すでに習い事に励んでおられるお子様の場合、例えばこのような言葉が出たときには、一度ご家庭で話し合うことをおすすめします。
ピアノを習っているから学校の宿題はできない
スイミングに行く日は疲れるから絶対に車で送り迎えしてほしい
体操教室を頑張っているから、他のことはしなくてもいいはずだ
(できなくても仕方ない)
これらはすべて、知らず知らずのうちに、お子様にとってなにかが負担になっていることのあらわれです。
このようなことになる前に、本当にお子様の成長に必要な習い事を取捨選択し、集中できるよう、次の章では習い事の目的について整理して見ていきましょう。
人気の習い事、目的別一覧
人気の習い事を大まかな目的別に分けてみました。(もちろん人によって目的は異なりますし、目的が複数あるものもあるでしょう。ここではあくまで大まかに区切ってみました。)
※クリックすると詳細が開きます
- 体操教室
- 水泳
- 空手、少林寺、柔道
- バレエ
- 野球
- サッカー
- その他グループ競技
- ダンス
- ピアノなどの楽器
- 英語、英会話
- 書道
- そろばん
- パソコン
- 学習塾
- プログラミング
- 理科実験
それぞれ「入り口」の目的は違いますが、もちろん共通点はあります。
それは、先生がいること。そして自主練習や宿題といった努力すべき課題があること。
ごく当たり前のことですが、とくに「努力課題の必要性」については、正式に習いごとを決める前にお子様と話し合っておいていただきたいことのひとつです。それぞれの体験教室に行かれたときや、お問い合わせのときにも、先生とよく確認することも大切。教室ごとに、指導方針や先生の指導理念には特長があります。
習い事で課される「自主練習」や「宿題」などの努力すべき課題(努力課題)がお子様にとって必要なものか?継続して取り組めるものか?
子どもの「やりたい!」との向き合い方
習い事による生活リズムの変化を考えておく
お子様の習い事は、ご家庭の生活リズムにも大きく影響を与えます。これらの変化を事前にしっかりと共有し、サポートの準備しておくことが重要です。
まずは時間のリズムです。
- 教室の送り迎え
- 自習練習(または宿題)を見守る
- 発表会や試合などのイベントの特別な時間
そして日々やることのリズムにも変化を与えます。
- 必要な教材や道具をそろえる
- 先生、他の保護者の方との連絡のやりとり
- 先生との面談や相談
楽しいはずのこれらのことも、毎月、毎年のこととなると「片手間」ではいかなくなります。
もちろん保護者の方ばかりではなく、お子様にとっても同じです。せっかくやりがいを持って頑張ろうとしているお子様には、練習や上達に集中してもらいたいですよね。
そのためにも、お子様の「やりたい!」のお声ですぐに教室を探すのではなく、「〇〇ができるようになったらどうしたいか」「いまの生活リズムと変わるところ」「宿題や自習練習の時間の確保」をお子様と話し合ってから、それに合った習い事、教室を選びましょう。
失敗、後悔…こんなはずじゃなかった習い事
このように、習い始める前にしっかり準備をなさったご家庭であっても、いざ入会してみるとさまざまな気づきが出てくると思います。
「思っていた以上に楽しい!」「仲間ができて嬉しい」「学校でいやなことがあった日も習い事の教室の先生に会えると元気が出る」という感想が聞かれると同時に、そうではない内容もあります。
新しく習い事に通い始めた子どもたちから聞く「こんなはずでは・・・」の声をまとめてみました。
- こんなに家で練習しないといけないと思わなかった(ピアノ・小3女子)
- 学校から直接通う約束なのに、家に置いているお習字セットを持ってこないといけない。遅刻しちゃう。どうしよう・・・(習字・小2男子)
- 土日に一日練習がある。こんなにしんどくなるなんて。学校の宿題と塾の宿題もしないといけない。忙しくて宿題なんてできるわけがない(野球・小3男子)
- 周りはどんどん進級するのに自分は進級できない。プールが苦手だからできるようになりたいと思って始めたけど、下手すぎて恥ずかしいからやめたい(スイミング・小4女子)
- 前にケンカした友達が同じ教室にいた。その子がいると分かってから習いに行く曜日は楽しみだけど憂鬱になった(ダンス・小6女子)
- 先生に聞きたいことがあるのにどうしても自分から恥ずかしくて言い出せなくて、家で復習するときにどうしたらいいか分からない(学習塾・中1男子)
大人から見れば「なんだ、そんなことくらい大したことはない」というようなことも、本人たちにとっては切実な問題です。その壁を乗り越えれば、すぐそこに有意義な学びが待っているのに、手前の段階で進むべき道を見失ってしまっています。
このようなとき、保護者の方はどのように対応するのが望ましいでしょうか。
子どもが嫌がる場合、挫折しそうな場合の親の対処法
壁を乗り越えられず、進むべき道を見失い挫折しかけている…
そんな時はもちろん「がんばれ」と励まして乗り越えさせるのも良いと思います。
また、教室の先生に相談したり、「無理しないでいいよ」とあえてブレーキをかけさせるというのも方法のひとつです。
しかし最終的にはお子様自身が「自分の身の振り方は自分で決める」ように促してみてください。
そうすることで、壁にぶつかっても自分でゴールを設定して続ける意思決定力が身についていきます。
習い事の教室は“学校”ではありません。
始めたきっかけはどうあれ「嫌でも通わなければならないもの」ではなく、上手になりたい、できるようになりたいと本当に願う人が集まるところです。
かえって“学校ではない”からこそ、自分の意思で「進む」ことも「退く」こともできるのです。
大人だけで方針を決めないことが大切
「子どもがやりたいと言っているからやらせる」「子どもがいやだと言ってるからやめさせる」とすべてがお子様任せになってしまったり、逆に「教室の指導のしかたと家庭の子育て方針とが合わないからやめさせる」と保護者の方が最終判断を下すようなケースもみられますが、これらはよくありません。
また、教室と保護者の方との連絡ツールは、ひと昔前は”れんらく帳“が主流でしたが、いまはアプリが導入されたり、お子様の通塾時間を見守るためのITツールも充実するようになりました。習い事の先生とのやりとりも、保護者の方がダイレクトにメッセージをやりとりできるツールを使っていることもあります。
しかし、それに頼りすぎると、肝心の当事者であるお子様本人の気持ちや考えが蚊帳の外になったまま、大人だけでお子様の指導方針を取り決めてしまうことにつながります。
《すべてお子様任せのケース》
・子どもがやりたいと言っているから続ける
・子どもが嫌だ、辞めたいと言ってるからやめさせる
《保護者が最終決定するケース》
・保護者の方がダイレクトに教室と連絡を取り、勝手に方針を決めてしまう
・教室の指導のしかたと家庭の子育て方針とが合わないからやめさせる
やはりお子様を含めた三者での話し合いが大切です。
習い事をさせる本当の理由(ねらい)とは?
子どもに習い事をさせる意味や理由はなんでしょうか?
習い事で経験を積ませたい
このような保護者の方のお声をよく聞きます。
その「経験」のなかに「お子様自身が悩み、工夫して乗り越える経験」「続けるかやめるかを自分で理由をよく考えて責任をもって決断する経験」を入れていただきたいと思います。
ピアニストや野球選手になりたいけど…
習い事で身につけたスキルや特技は、長い人生で必ず花開きます。しかし、習った人みんながそれを生きる糧にできるわけではないのが現実です。
たとえば、ピアノを習う子どもみんながピアニストになれることはありません。「夢はプロ野球選手だ!」と熱心に野球に打ち込む子であっても、それによってスポーツ推薦で進学できたり、それこそプロの道に進めるという保証は全くありません。
では、習い事の本当にねらいは何でしょうか。
子ども自身で壁を乗り越え、成長していく過程に意味がある
習い事は、いろいろな壁にぶつかりながら試行錯誤し、葛藤を乗り越えて上達していく過程を体感するためにあります。自分が好きだと思ったこと、やりたいと興味を持ったものだからこそ、それを貫くために必要な努力を知るのです。
たとえばお習字教室では、多くの場合、「きたない字をきれいにさせたいから」との保護者の方の思いがきっかけとなって、お子様が筆を持つようになります。
でも「続けていても昇級しないんだったらやる意味がない」とご家族が決めつけるようになってしまっては、お子様の「がんばりたい」という思いはねじれ、楽しんで習ってきた自分を否定するようなことになりかねません。
けれど
お習字は〇段を取るまでは続けたい。目標の段が取れたら一回やめて、友達と一緒に勉強の塾にも通ってみたいな。
中学生になったら、また少しでも続けたいし、高校生ではYoutubeで見た女子高生書道パフォーマンス、自分もやってみたいんだ。
と、お子様が自分で思い描いていたとしたら、どうでしょうか。
見守るご家族も、お子様自身でその努力のゴールを決められる心身の余裕をもたせながら、取り組ませてあげてください。
習い事をやめる時、子供が悔いなくやめられるか?
《1つのドアが閉まれば、もう1つのドアが必ず開く》
という有名な言葉があります。
もちろん「継続」は力になります。何かを取り組み続けることは、それだけで静かな自信につながりますし、団体の中でリーダーシップを発揮できる機会にも恵まれます。
でもそれ以上に、お子様が自分の取り組みに挫折や限界を感じたときこそ、大きな成長のチャンスです。さまざまな事情が重なって、やむを得ずやめることになってしまうとしても、これまで続けてきた自分を誇りに思い、胸を張ってやめられるような環境づくりをしましょう。
「自分なりに頑張ったけどあきらめて途中でやめてしまった」と自己評価して心を痛めてしまうと、あとあと何をやるとときにも自信が持てず、自分のことが大嫌いになってしまうお子様もいます。
そうならないように、「自分にできる練習や工夫はすべてやったからもう悔いはない。次は何に打ち込もうかな」と、笑顔で締めくくれる状況を与えてあげたいものです。
習い事で“学ぶ姿勢”と“心構え”を身につける
さらに保護者の方は、お子様の習い事の機会は「学ぶ姿勢」「教えていただく心がまえ」を身につける期間であるとお考えください。長い目で見て、必ず“人生戦略”のひとつになります。
見据えておきたい、将来社会で必要となる力
いまは幼いこどもたちも、10〜15年後には社会人となって仕事を持ちます。
どの企業組織も、いわゆる「学生気分」の抜けない新入社員が話題になりますね。彼らに共通するのは、「ただ待っていれば誰か責任ある立場の人が、優しくわかりやすく自分に教えてもらえるものだ」という幼い思い込みです。
その思い込みは、すぐに打ち砕かれてしまうでしょう。会社は、社員それぞれの強みを活かして利潤を追求し、社会貢献する場所です。「社員に勉強をさせて経験を積ませて育ててあげる学校」ではないのです。
仮に丁寧な研修制度がある企業にご縁があったとしても、その「丁寧な研修」や指導の内容を本当に受け止めることができるかどうかは、受け取る側の度量によります。上司をはじめとする周りの方々がいくら素晴らしくても、本人たちがそれを「素晴らしい」と認識することができなければ、ただすれ違いになるだけです。
このように社会人になってからも、学ぶ姿勢と心がまえは問われ続けます。このことを見据えて習い事選びをしていきましょう。
子どものマイナス意見は、公平な目で判断する
なにか習い事をすでに始めておられるお子様が、なにかの拍子にご家庭で、習い事の先生から言われたことや指導の内容について、マイナスの意見をおっしゃることもあると思います。
そんなときは、お子様にあれこれ助言をなさるよりも前に、その教室の先生にありのままをご相談なさってみてください。
習い事の先生は、その道のプロの方です。お子様を伸ばすためにはある程度厳しく負荷をかけなければならないと感じておられるのかもしれません。もしかしたら、その子が反発したり、落ち込む可能性もすでに見越して、あえて成長するように仕向けようとしているのかもしれません。チームワークやみんなが集中できる雰囲気づくりを重んじる場合は、ほかの生徒さんへの影響も考えて、一人ひとりに対応しておられます。
先生の意図は、まだ小さいお子様お一人では読み取りきれないこともあります。ぜひ保護者の方もお子様とともに先生の言葉に耳を傾け、公平な目でご家庭での話し合いにつなげていただければと思います。
子ども自身が、習い事の先生と真摯に向き合う機会を与える
厳しいようですが、習っておきながらその先生や教室に対して文句を言うお子様は、そもそも人に謙虚に教えを乞う姿勢が身についていません。
よく観察してみると、挨拶ができない、「ありがとうございます」が言えない、無断欠席をする、決められた時間に平気で遅刻をするなど、当たり前の行動ができていない人も目立ちます。そのことにより「先生から指導を受けられるチャンス」も自ら棒に振ってしまっており、とても損をしています。
どの習い事の先生も、そのお子様が「果たして本当に自分の教えを受け止められる段階かどうか」をよく見抜いておられます。家族でも親戚でもない、第三者の指導者の方であるからこそ、ご家族でも気づかないお子様の特長や良さを見つけることができるのです。
お子様が習い事において壁を感じたときには、感情的にならず、親に甘えずに大人にしっかりと自分の意見を述べるための訓練だと思って、お子様自身が先生と対話する機会を作ることをおすすめします。
習い事の先生は、やる気のある生徒を大切に育ててくださいます。ただ、お子様を「やる気にさせる」よりも、数多くの生徒の中から見込みのある生徒を見つけ、その子を伸ばすことに重きを置くというスタイルの先生が、一定数おられることも事実です。これが学校の先生との大きな役割のちがいといえるでしょう。
物事に向き合う情熱やモチベーションは、誰かに与えられるものであってはなりません。勉強も同じです。お子様自身が自分の中で、試行錯誤しながら育てていくものです。
せっかく時間を労力をかけて習い事に取り組むわけですから、お子様の将来に本当に役立つ経験であり財産となるよう、習い事選びの段階から、常に「ゴール」を意識していきましょう。