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わかりやすいディベートのしくみ 「ブレスト?」 

2022年1月15日学校情報

この記事を書いた人✐横山悠規 

この記事はシリーズものです。過去の記事は下記リンクから。

「①ディベートの分類」
「②ディベートで成長するための心構え」
「③定義の重要性」
「④ふさわしくない定義」

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シリーズの目的

・「英語ディベートが苦手…」
・「英語での発言に自信がない…」
・「大会に向けて練習したい…」

そんな皆さんの悩みを解決するために、このコラムを書き始めました。

このコラムでは、ディベートにおける各スピーカーの役割や、各スピーチに含むべき内容とアドバイスについてお伝えしていきます

第5回は「主張の文章構成」についてお届けします。

主張が求められる場面

主張とは、相手を説得するために自分の考えを伝えることです。主張が求められる場面は、ディベートに限らず、エッセイを書く時、スピーキングテストを受ける時など様々にあります。「あなたはどう思いますか?」という問いかけに対し、評価や採点のプレッシャーの中で説明しなければならないため、回答につまってしまった経験をした方も多いのではないでしょうか。では、どのようにしたら効果的に主張を述べることができるでしょうか。

PREPとは

主張の文章構成としておすすめなのがPREPです。それぞれ、Point(主張)、Reason(根拠)、Example(具体例)、Point(主張)の頭文字を取ったもので、意見陳述の基本的な文章構成としてよく使われます。Homework should be abolished (宿題を廃止するべきだ)という論題を例に、PREPの詳細を見ていきましょう。ショートコードショートコードショートコードショートコード

主張を伝えただけでは「なぜそう言い切れるの?」という疑問が残ります。主張は理由と具体例をセットで述べる、ということを意識しましょう。ちなみに、"Preparation(準備)" とPREPが似ていることから、「主張を述べる際に準備(PREP)するべきことは何か」と覚えると忘れないですよ!

効果的な主張とは?
~Pointとして使うべきアイデアの見分け方~

そもそも効果的なPoint(主張)とは何なのでしょうか。実際授業を行っていると、理由や具体例として述べた方が良いアイデアを、主張として使っているケースをよく見ます。

よく聞く主張として「宿題は単なる繰り返しの作業だ」という文があります。これは効果的な主張と言えるのでしょうか。これは事実を述べているに過ぎません。聞き手からすると「宿題が繰り返しの作業であることは分かったが、それがなぜ宿題の廃止につながるのか」と思ってしまいます。

単に事実を伝えるのではなく、その事実からどのような解釈ができるのか、 というところが大切になります。つまり、効果的な主張とは「事実から導かれる自分なりの解釈を加えた文」と言えます。先の例で言うと「宿題が繰り返しの作業だからどうなのか」という解釈の部分をしっかりと深めることが重要です。

× It is a repetitive task.(宿題は繰り返しの作業だ)
〇 Just doing repetitive tasks does not lead to improved academic performance.(繰り返しの作業を続けるだけでは、学力は向上しない)
〇 Repetitive tasks harms students’ autonomy.(繰り返しの作業は、生徒の自主性に悪影響である)


× Homework is a burden for the students. (宿題は生徒たちにとって負担である)
〇 Having too much burden leads to sleep deprivation. (負担が大きすぎると睡眠不足につながる)
〇 Having an unnecessary burden negatively affects motivation for study.(意味のない負担は勉強のやる気に悪影響を与えている)


そもそも効果的なPoint(主張)とは何なのでしょうか。実際授業を行っていると、理由や具体例として述べた方が良いアイデアを、主張として使っているケースをよく見ます。

先ほどの論題 “Homework should be abolished. (宿題を廃止するべきだ) " を用いて、ブレインストーミングをしながら効果的な主張のアイデアを探していきましょう。ブレインストーミングを行い、「宿題」という言葉から連想されるキーワードを集めると、次の図のようになります。

※効果的なブレインストーミングのやり方については次回以降に取り上げる予定です。

ブレインストーミングをもとに、主張を考えていきます。例えば、"burden(負担)" というキーワードをそのまま主張に使い、"It is a burden for the students.(宿題は生徒にとって負担である)" としました。これは効果的な主張と言えるのでしょうか。

これは事実を述べているに過ぎません。聞き手からすると「宿題が生徒の負担になっている、ということは分かったが、それがなぜ宿題の廃止につながるのか」と思ってしまいます。

単に事実を伝えるのではなく、その事実からどのような解釈ができるのか、 というところが大切になります。つまり、効果的な主張とは「事実から導かれる自分なりの解釈を加えた文」と言えます。先の “burden(負担)" を例に考えてみると、「負担だからどうなるのか」という解釈の部分をしっかりと深めることが重要です。

× It is a burden for the students.
〇 A burden causes sleep deprivation.


PREPの構成を使う前に、どんな主張をしたら良いのかわからない、という場合もあるかも知れません。実際、根拠として述べるべきアイデアや具体例として述べるべきアイデアを主張として述べてしまっているケースも教室で散見されます。

まずは先ほどの例の論題、Homework should be abolished (宿題を廃止するべきだ)を用いて、どのようなアイデアが主張として使えるか、ブレインストーミングをしてアイデアを出していってみましょう。※ブレインストーミングの効果的なやり方については次回以降に取り上げます。

まずは「宿題」に関連するアイデアをできるだけたくさん出していきます。上記のブレインストーミングの例だと、「学力」「反復」「部活」「負担」「コミュニケーション」「ストレス」「記憶」「睡眠不足」などのアイデアが出ています。

ここで、例えば「負担」というアイデアをそのまま主張として述べたとすると、どうなるでしょうか。

“It is a burden for the students." (宿題は生徒にとって負担である)

これは事実を述べているに過ぎません。聞き手からすると、「宿題が生徒の負担になっている、ということは分かったが、何故宿題を廃止するべきだと言えるのか」と思ってしまいます。

先ほど、主張は「~だと思う」「~するべきだ」「~だと推測される」など、その人の解釈が含まれる発話内容だ、と述べました。ブレインストーミングでアイデアを出したら、まずは、「~だと思う」「~するべきだ」「~だと推測される」と言えるものを探していきましょう。その際、『宿題』に関連するアイデアとして出したキーワードを組み合わせて、Assertive statement(断定文)の文を作っていきます。 (例:Repetition +Academic performance…Just doing repetitive tasks does not lead to improved academic performance.)

先ほどブレインストーミングで出したアイデアを組み合わせて、4つの文を組み立てることができました。(別のアイデアの組み合わせや他のキーワードを追加することも可能ですが、こちらは一例です)これら4つを比較してみましょう。

①の「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しない」はドリル演習や書き取りなどの宿題を課すこと自体が無意味であることの根拠として使えそうです。

②の「部活動等で多忙な中で宿題を終わらせるのは大きな負担だ」は宿題を課すことが適切ではないことの根拠として使えそうです。

③の「提出期限までに終わらせなければいけないというストレスから睡眠不足に陥ってしまう」は宿題によって健康被害が出てしまっているということの根拠として使えそうです。

④の「他の人とのコミュニケーションを介して覚えたことは記憶に残りやすい」は従来の宿題が無意味であることの根拠として使えそうです。

①と④を組み合わせ、❶「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」

②と③を組み合わせ、❷「膨大な量の宿題が生徒の健康被害に繋がっている」

という2つの主張を導き出すことができました。

このように、Pointとして述べる主張を考える際は、「~である」「~だと思う」「~だと推測される」という結論を裏付けられる根拠を探すと効率的に見つけることができます。

理由と具体例はいくつ用意すべき?
~1つの理由と複数の具体例で裏付ける vs. 複数の理由で裏付ける~

理由・具体例の使い方も、様々にあります。大きく分けると、①1つの理由と複数の具体例で裏付ける方法、②複数の理由で裏付ける方法があります。どちらもメリット・デメリットがあるので、使い分けができるようにしておきましょう。

①1つの理由と複数の具体例で裏付ける方法

まずは、1つの主張に対して、1つの理由と複数の具体例で裏付ける方法です。

主張「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」
理由「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しないから」
具体例①「無意味な繰り返し作業の例」
()
具体例②「典型的な宿題で繰り返し作業と呼べるものの例」
(英単語何度も書いて練習する)
具体例③「学力向上につながらない取り組みの例」
()

  • メリット:深く説明ができ、聞き手がイメージしやすくなる
  • デメリット:理由が1つなので、反論されやすい

②複数の理由で裏付ける方法

次に、1つの主張に対して複数の理由で裏付ける方法です。

主張「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」
理由①「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しないから」
具体例①「無意味な繰り返し作業の例」
()
理由②「他の人とのコミュニケーションを介して覚えたことは記憶に残りやすい」
具体例②「」
()

  • メリット:理由が複数ある分、相手から崩されにくい
    (1つの理由が反論で否定されてしまっても、残りの理由が残る)
  • デメリット:1つひとつの説明が薄くなる

前述の例では一つの主張に対して二つの根拠を組み合わせる、という形で例を述べましたが、必ずこうしなければいけない、というわけではありません。一つの主張に対して一つの根拠を述べ、具体例をたくさん述べる、という形もあります

例えば、 ❶「宿題は生徒の学力向上に直接的に貢献していない」 という主張の根拠として ① 「無意味な繰り返し作業をしても学力は向上しないから」 と述べ、具体例として、A.無意味な繰り返し作業の例 B.典型的な宿題で繰り返し作業と呼べるものの例 C.能力向上につながらない取り組みの例…などのように具体例を列挙する、というのも一つの手です。

ただし、一つ言えることとしては、一つの根拠のみで主張を裏付けた場合、その根拠を否定されてしまうと、その主張は成り立たなくなってしまう、ということです。根拠を二つ述べていれば、一つの根拠が否定されてしまっても、まだ主張自体は崩されていない、と言えます。多くのディベートにおいて論題に対して肯定する理由、否定する理由をそれぞれ二つずつ求められることからしても、一つの主張には二つ以上の根拠の裏付けがあるとディベートにおいて有利である、と言えます。

PREPで使えるフレーズ

最後に、PREPの構成に使えるフレーズをご紹介します。ショートコード

※firmly 「断固として」、strongly 「強く」、with certainty 「確信とともに」などを加えて強調することもできます。(例:I strongly believe that homework is resulting in physical harms on the students.)ショートコード

※主張の文に従属文としてつなげて伝えることもできます。(例:I believe that assigning homework has resulted in physical harm on some of the students because it requires them to sacrifice an enormous amount of time to complete.)ショートコード

※Remember…を使って、聞き手に具体例を思い出させる、という手法もあります。(例:Remember the news on the student who committed indiscriminate murder because of the stress from the overwhelming amount of school work?)ショートコード

今回は「主張の文章構成」をテーマにお送りしました。PREPの文章構成は、即興で意見を述べる際にも役立ちます。ぜひ覚えましょう!

次回のテーマは「立論の組み立て方」についてです。お楽しみに!

SQ-Plan-APとは

政策論題を用いた議論は、「今は許されているけど禁止しよう」「今は禁止されているけど合法化しよう」「今はAのルールだけどBのルールにしよう」という議論です。すなわち、政策論題=現状の政策や規則に変更を加える提案である、と言えます。そこで、肯定側が伝えるべき内容を指す枠組みとして、SQ, Plan, APという言葉があります。

SQ, Plan, AP とは、現状分析(Status Quo)プラン(Plan)プラン導入後の世界(After Plan)を指す用語です。現状どのような問題が存在するのか、どのような解決策で問題を解決できるのか、そして問題を解決した後の社会はどのように変わるのか。基本的に肯定側がこの3つを説明できれば、何故このディベートがこの論題を用いて実施されているのか、説明することができます。

それでは、SQ, Plan, APとしてどのような内容を説明すると良いでしょうか。そのヒントとなるのが『立証責任』です。

立証責任

政策論題においては、肯定側が説明するべき内容が決まっており、それを立証責任("Burden of proof")と呼びます。簡単に言うと、現状を変えるべき理由の説明です。

立証責任には、以下の6つの要素があります。

政策論題を用いた議論は、「今は許されているけど禁止しよう」「今は禁止されているけど合法化しよう」「今はAのルールだけどBのルールにしよう」という議論です。すなわち、政策論題=現状のルールに変更を加える提案である、と言えます。政策論題において肯定側が説明するべき内容をBurden of proof(立証責任)と呼びます。前述の通り、政策論題を用いた議論は現状を変える政策の可否を問う議論ですから、現状のルールを変えることの正当性を説明する必要があります。

  1. Harm(問題)
  2. Inherency(内在性)
  3. Topicality(話題性)
  4. Solvency(解決性)
  5. Significance(重要性)
  6. Justification(正当性)

1.Harm(問題)…論題の背景にある問題、害悪がどんなものなのか、説明をする必要があります。もし問題自体が存在しないのであれば現状のルールに変更を加える必要はなくなります。
一言で言うと「現状のルールを変える理由の根底にある問題は何なのか」、ということです。

2.Inherency(内在性)…この問題はトピックと切り離せない、という説明が必要です。もしこの問題がトピックと切り離すことができる問題なのであれば論題で提示したルールの変更は必要がなくなります。
一言で言うと「解決しようとしている問題とルール変更は切っても切れない関係なのか」、ということです。

3.Topicality(話題性)…論題の意図に沿った解決策である、という説明が必要です。もし論題の趣旨と異なる解決策の提案なのであれば、論題とは異なる議論になってしまうので、論題自体を変更する必要が出てきます。
一言で言うと、「その解決策は提案されているルール変更がそのまま実施される内容になっているか」、ということです。

4.Solvency(解決性)… その問題はこうやって解決していく、という説明が必要です。もし実現可能性が薄いのであれば、現状のルールを変更するリスクの方が大きくなってしまいます。
一言で言うと、「解決策は提示された問題を解決できるものなのか」、ということです。

5.Significance(重要性)…現状のルールに変更を加えるので、その変更が重要なことである必要があります。もし重要なことでないのであれば、現状を維持した方が得策と言えます。
一言で言うと、「その問題解決はルール変更をするに値することなのか」、ということです。

6.Justification(正当性)…現状のルールに変更を加えるので、その変更、解決策の実施が正当化できるものである必要があります。もし正当化できないのであれば、現状を維持した方が得策と言えます。
一言で言うと、「その解決策の実施は正当化できることなのか」、ということです。

それでは、前述のSQ, Plan, APの枠組みに立証責任の要素を当てはめてみましょう。

具体的に述べると、「現状分析」として①問題と②内在性を説明、「プラン」として③話題性と解決性を説明、「プラン導入後の世界」として⑤重要性と⑥正当性を説明します。まずはSQ-Plan-APをひとつひとつ丁寧に説明できるように心がけて立論に挑戦しましょう。

現状分析(Status Quo)①問題と②内在性
プラン(Plan)③話題性と解決性
プラン導入後の世界(After Plan)⑤重要性と⑥正当性

例として、「宿題を廃止するべきだ」という論題で立証責任の要素を基に立論を組み立ててみましょう。

① 【Harm:問題】Recently, youths not getting enough sleep has been a huge problem.

② 【Inherency:内因性】Homework is designed in such a way that the students are forced to sacrifice a large amount of their private time at home to finish it, because they have to work on time-consuming tasks, such as drills and essay composition.

③ 【Topicality:話題性】We can solve this problem by abolishing homework assigned by the teachers to force the students to work during their private time.

④ 【Solvency:解決性】By implementing this plan, the teachers can no longer assign homework assignments to the students, so there will be no need for the students to allocate their private time to doing homework. As a result, they can secure enough time to sleep.

⑤ 【Significance:重要性】After we implement this plan, the students will be well rested when taking classes at school, so they can focus much better on learning. It is crucially important to make it possible for the students to secure enough time to sleep during their private time in order to maximize the effectiveness of learning.

⑥ 【Justification:正当性】Considering the fact that the labor laws for corporations stipulating the importance of maintaining a proper work-life balance and the Japanese Constitution guaranteeing the freedom of choice, it is natural that the schools follow the same logic.

まずは「現状分析」。①『問題』=生徒の睡眠時間が減ってしまっている ②『内在性』=ドリル練習や作文など、時間のかかる課題を強いられる、という宿題の特性上、生徒はプライベートの時間を大きく割いて宿題に取り組まなければならない。

続いて「プラン」。③『話題性』=学校の授業で教師が課外で取り組む宿題を課すことを禁止することで問題を解決できる。④『解決性』=このプランを導入すれば、教師は宿題を課すことができなくなるので、生徒は自分のプライベートな時間を宿題に割く必要がなくなる。そうすれば十分な睡眠をとる時間が確保できる。

最後に「プラン導入後の世界」。⑤『重要性』=このプラン導入後、生徒たちは十分に休めた状態で学校での授業に集中することができるようになる。学習効果を最大限にするためにも、睡眠時間を十分に確保することができるようになることはとても重要である。⑥『正当性』=実社会でもワーク・ライフ・バランスをしっかりと保つことは労働法などで規定されており、選択の自由は日本国憲法で保障されているので、教育も同じ方針にするべきである。

肯定側として立論をする際にSQ, Plan, AP の枠組みを使い、立証責任の6要素、問題、内因性、話題性、解決性、重要性、正当性を説明することで効率的かつ簡単に立論を組み立てることができます。こうして組み立てた立論に、前回のコラムでご紹介したPREPの構成を用いて根拠や具体例、具体的説明を時間が許す限り肉付けしていくことで、より効果的な立論スピーチを作ることができるのです。

今回は「 立論の組み立て方 」をテーマにお送りしました。

次回のテーマは「ブレストの仕方」についてです。お楽しみに!

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