「言うことを聞かない子供」にウンザリ?親のNGな叱り方と自立を促す育児法!
勉強するように何度注意しても、なかなか勉強してくれなくて……
どうしたら勉強してくれるようになるのでしょうか?
塾講師という職業柄、勉強についてのご相談はもちろんですが、このようなご相談を保護者の方からいただくことも珍しくありません。
さて、このようなお悩みを深く聞いていくと、その向こう側には次のような本音が見えてきます。
どうしたら言うことを聞いてくれるのだろう?
ここで少し考えたいのは、「どうしたら言うことを聞いてくれるのだろう?」という言葉に隠された主語です。
どうしたら、子どもは私(親)の言うことを聞いてくれるのだろう?
実は上記の言葉こそ、保護者の方々が抱えていらっしゃるお悩みの本質なのではないでしょうか。
ここでは、言うことを聞かない子どものしつけ方を考える上で、保護者の方々に考えていただきたいことをお伝えします。
子どもを自分の思いどおりにしようとしていませんか?
「子どものあるべき姿」に囚われると親も子もストレスに
子どもに対して寛容に接するべきか、厳格に接するべきか。
そのバランスの取り方でお悩みの方は少なくないでしょう。
インターネットやSNSが一般的となった社会では、ありとあらゆる情報が錯綜しています。子育てで困ったときにインターネットで、「子育て 悩み」「言うことを聞かない子ども対処法」などと検索すると、膨大なアドバイスがあらわれます。
「子どもには子どもの自我がある。子どもの自由な自我を尊重しなくてはならない」
一方で、「子どもにも厳しく社会的マナーを身につけさせなければならない」
どのアドバイスにももっともらしいことが書いてあるでしょう。そして、そのアドバイス通りに実践しなくてはならないような気持ちになるかもしれません。
また、「こんなしつけはよくない」「間違った育児」など、「こうしてはいけない」という注意書きもたくさんあります。それにのっとらなかった場合、もしかしたらSNSで非難の対象になるかもしれないという心配もあるかもしれません。
このように、ただでさえ日頃から子育ての状況を他者(学校や習い事、塾の先生、クラスメートなど)に見られる状況であるのにもかかわらず、インターネットでさらに価値観や行動を束縛されては、保護者の方の責任やストレスは増していく一方でしょう。
また、「こんなふうにしなさい」と社会やインターネットで作られた「子どものあるべき姿」を求めてしまっては、子どもにもまたストレスを与えてしまいます。
このように、あらゆる情報が溢れる情報社会の中で、親が見失ってはいけないことは何でしょうか?
まずは親自身が自分の価値観を形成すること
まず、親も子どももそれぞれ別の自我を持った人間であり、多様な価値観があって良いと受け入れることが重要です。
もちろん、誰かを傷つけるようなことや、公共の迷惑になるようなことはきちんと教えなくてはなりませんが、子どもにも子どもの考えがあることを認めてあげることが大切なのです。
その上で、まずは保護者の方がしっかりと自分の価値観というものを形成することが大切です。
ときには周囲のアドバイスを聞くことも大切ですが、多くのアドバイスや情報の中からご自身に合った価値観や行動を選ぶことがもっとも大切なのです。
保護者の方の考え方が一貫していれば、子どもへの接し方も理にかなったものとなるでしょう。
保護者の方の筋を通す姿勢から、子どもも多くを学ぶはずです。
子どものチャレンジを温かく見守りましょう
もしかしたら、いくら説明しても子どもがどうしても納得してくれないこともあるかもしれませんね。周囲に相談しても、どれだけ手を尽くしても、わがままばかりでどうしてもうまくいかない―
そのようなときは、「これを理解するには時間がかかるのだ」と考えてみてください。そのときはわからなくても、きっと気づくときが訪れます。
子どもには子どもの人生があり、乗り越えるべき壁がいくつも現れます。保護者の方は、その壁を乗り越える手伝いをすることもあるでしょう。しかし、ときには子ども自身の手だけで乗り越えなくてはならないこともあります。子どもの自我を尊重するとは、子どもの考えを尊重するだけでなく、子どもが自分の手で壁を乗り越えることを見守ることでもあるのです。
「子どもを親の思いどおりにしない」ことは、放任して子どものわがままを許すことでも、子どもの考えを尊重しながら子どもが転ばないように手助けをすることでもありません。
親自身が考えた大切なことを子どもに伝え、子どもがチャレンジすることを温かく見守ることです。保護者自身も自分の考えを大切にしながら、子どもの考えややってみたいことに耳を傾けてあげてください。
子どもが前向きに行動するようになるには
命令しても子どもの積極性を奪うだけ
誰かを自分の言うとおりに動かすことは、簡単なことではありません。親子関係においても同じです。
「勉強しなさい」
と、自分が言われたらどのように感じますか?
いやだ、面倒くさい、人から言われるとやる気がなくなる……。
頭ごなしに命令されると、誰も積極的に動きたがりません。
かといって、「勉強してほしいのに、言ったら逆効果だし、でも言わなかったら伝わらないし……」と悩むのも建設的ではありませんね。
ではどうすれば、子どもの自主性・自立心を育み、積極的に動くようになるのでしょうか?
好きなことをしているとき、子どもは積極的になる
保護者の方に考えていただきたいのは、ご自身が「自分から動いてみよう」と思うのはどんなときかということです。
まず、自分の好きなことをしようとする場合、積極的に動くことができますよね。
例えば旅行が趣味という方で、予定を考えることが好きな場合、インターネットを駆使して行き先・時間割・移動手段・コストなどを考えることは苦にならないでしょう。
子どもも同じです。
「好きなこと」「興味があること」については、誰かが口を出さなくても黙々と取り組むでしょう。
子どもに好きなことや興味のあることを見つけてもらいたい場合、さまざまな場所に連れて行くことをおすすめします。
全国一周旅行に連れて行きなさいと言いたいわけではありません。近場の公園や、少し頑張れば行くことができるような山や川や海などで良いのです。子どもの目線に立って、小さな草花を見つけたり、きれいな石を見つけたりしてみましょう。
親の質問が、子どもの関心をさらに引き出す
このときに、「これってなんていう花だろうね」「この石はどこから来たのかなあ」などと子どもに問いかけてみましょう。
子どもはきっと、自由に発想を飛ばします。もしかしたら、お父さんやお母さんの問いかけに答えようと思って、花の名前や川の流れに関する本を探すかもしれません。
「勉強するようになってほしいから」と期待するよりは、子ども目線で小さな発見をいっしょに楽しんでみてください。お父さんやお母さんが喜ぶと、子どももうれしいのです。
楽しい思い出や、子どもにとって印象深い思い出は、その後の関心事になり得ます。
自然に触れ合うことで理科に興味を持つかもしれません。動物と触れ合うことで、動物関係の職業に興味を持つこともあるでしょう。また、誰かのお見舞いなどで病院に行くような経験があれば、病院や福祉関係の仕事に興味を持つかもしれません。
どこで、なにがきっかけとなって、子どもの好きなことや興味のあることが見つかるかはわかりません。しかし、経験の数だけきっかけが生まれる可能性が高まります。
些細なことでも褒め、一緒に喜んであげることが大切
「いやいや、仕事でなかなか子どもを遊びに連れて行くことは難しいんだけど」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。そのような方に考えていただきたいことは、子どもにきちんと関心を向けているかどうかということです。
ご自身のお仕事で考えてみてください。
「この資料、頑張って作ったんだけれど誰も褒めてくれない」
「毎日シンクの掃除をしているのは自分だけだけど、誰も気づいていないな」
などと、小さなことかもしれないけれども、心にチクッと刺さるようなことはありませんか。
反対に、
「いつもコピー用紙を補充していることに気づいて、ありがとうって言ってもらえた」
「常連のお客様にいつも良い笑顔をしているねって褒められた」
など、思いがけず褒められて心が温かくなった経験もあるのではないでしょうか。
ここで気づいていただきたいのは、「毎日頑張っているけれども認めてもらえない」つらさと、「ほんの少しのことで認めてもらえる」うれしさです。
つらいこともあるけれど、認めてもらえたときの喜びはとても大きなものでしょう。自分がひとりで納得して仕事を進めるよりも、誰かに褒められたり認められたりしながら仕事を進めたほうがやりがいを感じるものです。
子どもも親に認められているという自信があると、前向きに行動できます。
いつも子どもの行動をチェックして、ひとつひとつ「すごいね」「よくできたね」と褒める必要はありません。
ただ、子どもの行動で気づいたことがあったら、「部屋をきれいに片付けているね」「毎日宿題を頑張っているんだね」などと、子どもの行動を認めるような言葉をかけてあげてください。
そのうえで、保護者の方自身がうれしく思ったことは、目一杯喜んであげてください。
「あなたのことを認めているよ」というメッセージは、「あなたをいつも見守っているよ」というメッセージでもあります。
無理に言葉にする必要もありませんし、気づいたときでかまいません。お父さんやお母さんが気づいてくれた、認めてくれたという体験が、子どものやる気を伸ばします。
他の子供と比較してしまうのがよくない理由
子どもを叱るとき、つい「○○ちゃんはできるのに!」「△△君はちゃんとしているのに」などと、誰かと比べていませんか。
友達や兄弟間、もしかすると親戚の子同士で比べてしまうこともあるかもしれませんね。
人はなにかと比較をすることが多いものです。インターネットにも、芸能人好感度ランキングや、若手俳優イケメンランキング、今週のミュージックダウンロード数ランキングなど、順位付けや比較を行う記事があふれています。
比較されることで苦手意識や劣等感が生まれる
自分自身の立場で考えてみましょう。仕事において、業績(数字)でお給料が決まることはありませんか。その業績を他人と比べてはいませんか。家庭において、自分の夫と友達の夫をつい比べてはいませんか。自分の容姿や能力を、他人のそれと比べていませんか――。
誰かやなにかを比べるという行為には、優劣がつきまといます。「○○より優れている」と感じるのは快感かもしれません。しかし、「△△より劣っている」と考えたらどうでしょう。「自分は△△より劣っているからダメだ」とネガティブになりませんか。
子どもも、叱られるときに比較されると、「○○ちゃんより自分はダメなんだ、できないんだ」と落ち込みます。これが繰り返されると、○○ちゃんに対して劣等感を抱くようになるでしょう。そして、叱られた物事に対して苦手意識を持ち、コンプレックスを膨らませていきます。
家庭は子どもにとって自信を取り戻せる場所
学校や習い事など、子ども自身のコミュニティのなかでも、子どもはさまざまな比較行為にさらされています。わかりやすいところでは、学校のテストや、習い事のコンクールなどです。
子どもは家の外でも、コンプレックスを抱くことがあるでしょう。ひとりで悩むこともあるかもしれません。そのうえ、家庭でも誰かと比較されたらどうでしょうか。一番信頼している親にさえ、「他人と比べてダメな子だ」と言われてしまうと、自信を失います。
家庭は子どもが帰ってくる場所です。もっとも安心できる場所なのです。その場所でも自信を失ってしまうと、子どもは行き場を失います。もしかすると、親子間の信頼関係にまで影響を及ぼす可能性があります。
子どもの叱り方、重要な2つのポイント
では、子どもを誰かと比較することなく上手に叱るにはどうすればいいのでしょうか。重要な点が2つあります。
① 主語を親自身(私)にする=子ども自身の問題に焦点をあてる
子どもを叱るときは、子ども自身の問題に焦点をあてましょう。子どもの行為でなにがいけなかったのか、どうしていけなかったのかを、まず親自身が考えて整理してください。そして、
「私は暴力をふるうのは嫌いだな」
「私は一問でもいいから算数の問題にチャレンジしてほしい」
など、主語を親自身(私)にして、親自身の気持ちを伝えてあげてください。
②(瞬発的に叱らなければいけない時は)できるだけ簡潔に伝える
ときには、瞬発的に叱らなければならない場面もあるでしょう。そのときは、
「暴力禁止!」
「問題を投げ出さない!」
など、できるだけ簡潔に伝えることがポイントです。
親自身が自分の考えを発信すると、子どもは子どもなりに受け止めます。そして、子どももまた自分の考えを発信してきたら、受け止めてあげてください。誰かと比べるのではなく、目の前の子どもに対して、どのようにしてほしいのかを素直に伝えてみましょう。
子どもを認め、親子の信頼関係を深める
子どもに言うことを聞いてもらうためには、まず、保護者の方ご自身が自分の考えを整理することです。そして、ご自身の考えも、子どもの考えも、ひとつの考え方として認めてください。
子どもを認めることで、親子の信頼関係は深まります。すると、子どもはきっと、親の考えに耳を傾け、自分の考えとすり合わせて行動するようになるでしょう。